耕作放棄地をなくして地域を守る 原田俊祐さん(原田農園)

フルーツ

69年前に植えた
小さなりんごの木から
すべてが始まりました

ほぼ何の予備知識もなく、取材に伺った。

着きましたと言われ、車を降りたら、目の前に白壁の古民家を大きくしたような威風堂々たる建物があり、広い駐車場(乗用車200台、バス30台が止められるとのこと!)にいた。

原田農園外観

いやいや、次の取材は原田農園ですよね。ここはテーマパークか何かで、こちらで休憩ですかと思っていたら、ここが原田農園ですと言われて、ものすごく驚いた。

営業課長の原田俊祐さんが笑顔で迎えてくれ、館内を案内してくださった。

原田農園2

入口を入ると、道の駅さながらの地元の農産品がずらりと並んでいる。さらにはりんごを使用したアップルクーヘンを焼くガラス張りになった工房があり、実演販売も実施。アップルパイや林檎ジュース、ドライフルーツなども自家製。

それらのメイン素材のほとんどが自社農園産。ここに来れば沼田の手作り感いっぱいのお土産は間違いなく手に入る。

原田農園3

2階のフロアに案内されてさらに驚いた。体育館のような広さの大食堂。最大で600人が一堂に会して地元の季節の素材を生かした食事をとることができる。

原田農園A

「69年前に植えた小さなりんごの木からすべてが始まりました」

 と原田さん。農家の高齢化が進み、耕作放棄地が増えている問題が各地で表面化しているが、沼田も例外ではない。原田農園は耕作放棄地を無くすために近隣農家と協力し続けてきた。農家をやめたり、農地を手放そうとしている人たちと話し合い、その農地を買い取ったり、借り上げたりして原田農園の管理下に組み入れてきた。原田農園の主導ならまだ農業を続けようとする人も多かっただろう。

原田農園4

それだけでなく、そうやって少しずつ広がってきた農地、増えてきた農産品を並べたり、材料にしたりといった館の中で製造や販売業務に従事する人たちの雇用も生み出した。原田農園は名実ともにまさに沼田の救世主なのだ。

「耕作放棄地になって雑草だらけになると、害虫や菌も発生しやすくなる。周囲にも被害が及ぶんです。そうならないように私たちは農家に働きかけてきました」

原田農園5

 一方で沼田そのものを守るそうした取り組みは、ネーチャーリゾートというコンセプトとして結実する。来園者が自然に触れることができる、沼田ならではのサービスが生まれた。原田農園管理下のビニールハウス、露地の農園では1年を通じて「味覚狩り」ができる。これが原田農園の最大のセールスポイント。りんごはもちろん、いちご、ブルーベリー、さくらんぼ、桃にぶどう、野菜、それにきのこ。

四季折々の味覚が楽しめるだけでなく、そこで収穫した素材を使用するお子様向けの料理教室などの体験、ワークショップ的なイベントも企画。そこでの体験は子供たちの未来、引いては農業の未来へとつながっていくはず。

原田農園6

近隣農家の多くがりんご園に特化した観光農園を個別に立ち上げて、それぞれの特徴を出しているのも楽しい。さらに進んで原田農園のようにより集客できる環境を整え、装置を作り、資金や人材をたくさん投入することで県外、市外の人にもわかりやすいアピールが完成する。どちらも必要。それが全体として沼田の農業の奥行きを作り上げていくのだろう。美味しい野菜や果物が収穫できる沼田だからこそのパフォーマンスだ。

原田農園B

「利根沼田は日本一の河岸段丘のため、生産地間で最大の標高差が200メートル以上あります。収穫期の短い果樹が標高順に収穫期を迎えるので、結果的に収穫期間を長くして果物を供給できるんです」

 と原田さん。

豊かな自然環境を一方的に甘受するのではなく、冷静に見つめて未来を常に意識して生かしていくこと。原田農園はめざすべき未来を自力で切り開いている。

 そんな生産者が沼田にはいるのです。

取材/堺谷徹宏
撮影/高津修、沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香

株式会社原田農園
http://www.harada-nouen.com/
認証品:りんご、林檎じゅうす、はらだのドライフルーツ
住所:沼田市横塚町1294
電話番号:0278-22-3991
取材を受けた方:原田 俊祐


Farmer's Voice

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群馬県沼田市の認証ブランド「NUMATA BRAND」支える生産者さん。インタビューから見えた"生産者の声"を紹介しています。

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