ボケないために定年後に始めた農園 林孝俟さん(林ブルーベリー園)

フルーツ

結果枝を見極めるのが重要。
おもしろくて仕方がないです

「ボケないためにとすすめられてブルーベリー栽培を始めたんです」

林孝俟さんはそう言ってニコニコ笑う。現在79歳ということだが、顔色がよく、肌もつやつやなのに驚く。利根農(現在の利根実高)では果樹部の部長をし、先生の助手として果樹を育てることを率先してやっていた。農家の長男だったが、すぐには継がずに前橋市の自動車会社に就職して定年まで営業と管理職をつとめ、退職後に農家を継承。近くにブルーベリーに詳しい人たちがたくさんいたこともきっかけでブルーベリー栽培を始め、今では5反歩(約0.495ha)の農地で1500本のブルーベリーの木を育てている。圃場は2か所。一つは観光農園で、もう一つは出荷専用。群馬県の品評会で金賞にあたる知事賞を過去に5回も受賞している。

林ブルーベリー園_丁寧な選別

退職後に奥様のよし江さんと二人三脚で取り組んできた。定年まで会社勤めをした後で新たな事業に向かうには相当の覚悟がいる。資金はもちろん、一番肝心なのは体力。実際に身体を動かす体力と、気持ちの体力。要するに健康を自覚していないともう一度よいしょと身体を起こすことは難しいはず。

「庭木や果樹の剪定が趣味なので、大変と思ったことはないです。楽しんでやっています」

 林さんはそう言いながら常ににこやか。健康ですね。

「これは妻のおかげですね。栄養バランスのとれた食事を妻がずっと作ってくれているので」

林ブルーベリー園_天ぷら

 取材に同席してくれた奥様のよし江さんにご主人の好物を聞いてみた。

「味噌の天ぷらですね」

 よし江さんはそう言いながらご主人をちらりと見やった。その視線がとても温かい。味噌の天ぷらとは地元の味噌を粉に溶かして揚げたものらしい。美味しそうですねと返した。

「これはね、美味しいんですよ」

 林さんが嬉しそうに言う。しばらくしてキッチンで調理する音が聞こえ、お嬢様が取材チームに味噌の天ぷらをふるまってくださった。

「実際に召し上がっていただくほうがいいかなと思って。母が作るのとは微妙に違うかもしれませんけど」

「いやいや、とっても美味しいよ」

 ぼくらが感想を言う前に林さんが感想を言ってしまった。少し遅れて、ぼくらも味噌天へのリスペクトを口にしたけれど。この美味しさはサプライズ。香ばしさも格別。林さんが本当に美味しいものを食べて健康を維持していることが納得できる気がした。ほんわかとした空気があたりに満ちているが、剪定や土壌管理の話になって、林さんの柔和な表情の向こうに仕事への厳しさがちらりと見えた。

「結果枝を見極めるのが重要です。枝ごとの花芽を少なくして一個の実をいかに大きく育てるか。毎年同じ収量を出せるように枝全面に光を当てるようにしています」

 群馬県の奨励品種「おおつぶ星」「あまつぶ星」と「ブルーレイ」を中心に無農薬、有機肥料での栽培。PH4.3〜5の酸性土になるように土壌管理をしている。

林ブルーベリー園_ブルーベリー

収穫時には早朝に樹上で完熟したものだけを厳選して手摘み。それ故、濃厚で甘味のある実を味わえることで好評となり、北海道から沖縄の離島までのお客様を獲得している。その高い品質の果実を使ったジャムやジュースも人気だ。

観光農園の全面には来園客が歩きやすいようにバーク(生の木を細かく砕いたもの)をちりばめるなどの工夫も施す。それはやがて土に戻り、肥料になる。林さんご自身が「整備された自慢の観光農園」と胸を張る。やるべきことをきっちりやる人だなと思った。長く企業で営業をしていたこと、幼い頃から家業の農業に触れていたこと、さらには庭木いじりの趣味までもが林さんの農業家としてのキャリアを形作り、押し上げてきたであろうことは想像に難くない。

 そんな生産者が沼田にはいるのです。

取材/堺谷徹宏
撮影/高津修、沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香

林ブルーベリー園
認証品:ブルーベリージュース、ブルーベリージャム
住所:沼田市原町287
電話番号:0278-24-9366
代表者:林 孝俟

Farmer's Voice

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群馬県沼田市の認証ブランド「NUMATA BRAND」支える生産者さん。インタビューから見えた"生産者の声"を紹介しています。

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