そばの受粉にミツバチを使う 藤井美智男さん(ふじの輪組そば)

米・そば

娘がそば打ち日本一をめざしている
だから
おれもそば日本一をめざす

2022年の初頭、群馬県の山間、みなかみ地域を中心に大雪が降って少し経った頃に白沢町で藤井美智男さんにお会いした。畑仕事の途中だったのか、泥だらけのゴム長靴にレゲエ・ミュージシャンがかぶる手編みのラスタ・キャップのような形状の小さなニットキャップを頭にちょこんと載せて現れた藤井さんは満面の笑顔で迎えてくれた。

「もともとはね、自給自足のためにそば作りを始めたんです」

 そばの生産を始めて35年。平成29年に農林水産省政策統括官賞を受賞し、同年群馬県の農政部長より名前のなかったそばに「ふじの輪組そば」の商品名をもらう。令和元年、立毛共進会知事賞、令和4年1月26日には新そば食べ比べ会人気賞を受賞。沼田市はもちろん、群馬県を代表するそばの生産者として知られているそばの生産者だが、無邪気に屈託なく笑う藤井さんの笑顔の向こうには人知れない長い苦労があったはず。

「気候が変わってね、昆虫がいなくなった。特にミツバチがね」

 懇意にしている同じ沼田地域の養蜂家にミツバチの巣箱を借りてそば畑に置いたら、ミツバチが花の蜜を集める際に受粉を促して実がいい感じでふくらみ、収穫量が増えた。味も良くなったという。藤井さんの畑は標高約600メートルの高さにある。昼夜の寒暖差が作物にいい影響をもたらす。環境的にはそばに適した栽培条件が揃っている場所。その場所で藤井さんは農薬も化学肥料も使わず、有機肥料のみを使用してそばを栽培している。

「片品川にかかる朝霧もいいんですよ。ふわーっとね、真っ白にかかる。あれがね、いいんですよ。実が甘くなるし、香りも良くなるんです」

 そばは雨と風に弱い。秋そばの時期には台風が来るので、リスク分散として5年ほど前から夏そばを始め、年2回の生産とした。

「いろいろな賞をもらってから他の産地からも生産者が畑にきてくれるようになった。本当に勉強になりました」

 娘さんが社会人として働きながら、そば打ち日本一をめざして試技会にエントリーしているという。長年、そば作りに取り組み、大きな賞をとった父の背中を見続けてきた娘がそれに刺激を受けて、そば打ちをめざす。その姿を見て、父は父でまた刺激を受けて前を向く。

「おれがもらった賞は日本で二番の賞、娘がそば打ちで日本一をめざしているから、おれもそば一番を目指すんだ」

 そんな生産者が沼田にはいるのです。

取材/堺谷徹宏
撮影/沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香

藤井 美智男
認証品:ふじの輪組そば
電話番号:0278-53-2923
代表者:藤井 美智男

Farmer's Voice

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群馬県沼田市の認証ブランド「NUMATA BRAND」支える生産者さん。インタビューから見えた"生産者の声"を紹介しています。

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