美味しいりんごに
人間味がついてくるイメージで
お客様に接しています
繁忙期には朝5時起きでりんごを収穫し、顧客へ発送する。顧客は関東圏はもちろん、北海道、九州、沖縄にまで広がっている。
「うちの品種は15種類くらいかな。紅鶴という新しい品種もありますよ。綺麗な赤い色でこれは美味しいですよ」
美果実フルーツ園の齋藤憲之助さんは日に焼けた褐色の顔をくしゃくしゃにして笑った。人懐っこい笑顔が印象的だ。沼田にはりんご園がたくさんあって、その数ざっと100超。そのほとんどがりんご狩りのできる観光りんご園として営業し、来園者が顧客になって毎年オーダーが入る。
齋藤さんの園も「発送よりもりんご狩りの人が多い」という。一度りんご狩りにきてくれた人に、徹底したサービスを心がける。細やかな顧客管理に気を配る。丁寧な接客をすることを大事にしているが、何より味の良いりんごを作ることに心血を注ぐという。
「米ぬか、炭などの有機肥料を土に入れ、藁をかけて発酵させる。果実に光を当てる。剪定をしっかりとやる」
りんご農家にとって普通のことを普通にしっかりやれば、美味しいりんごができる。沼田はそんな地域だと齋藤さんは言わんばかり。
「私はね、14玉にこだわってるんです」
え?14玉? りんごを詰め合わせる定型の段ボールには小玉なら16玉入る。12玉、13玉詰めてちょうど良く納めると大玉になって顧客が扱いにくいと齋藤さんは考え、最適の玉数を14玉に決めた。いわゆる中玉と呼ばれるサイズ。大玉と中玉。並べて比べれば、確かに違いがあるが、なんとなく大玉のほうが価値がありそうに思ってしまうのだが、そうではないらしい。中玉にサイズを揃えることで顧客にストレスなく食べてもらおうという齋藤さん一流の気遣いだ。
「りんごは枝が横にぐんぐん伸びて収穫しにくくなることがあるので、上から枝を吊ってお客様がりんごをもぎやすいようにしています。美味しいりんごに人間味がついてくれば、お客様は繋がっていきます」
齋藤さんは今日もまたにっこり笑いながら、顧客が何を求めているのか、観察し、検討し、考え抜いているのだろう。
そんな生産者が沼田にはいるのです。
取材/堺谷徹宏
撮影/高津修、沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香
美果実フルーツ園
http://www.jatone.or.jp/index-kumi/mikami_fruit/main.htm
認証品:りんご
住所:沼田市上発知町1888
電話番号:0278-23-9177
代表者:齋藤 憲之助
※美果実フルーツ園は、園主の齋藤憲之助さんが令和4年5月21日にご逝去されたため閉業しました。
取材日 令和3年8月11日
撮影日 令和3年10月22日