山の朝霧のイメージできのこを栽培 木内克也さん(沼田きのこ園)

きのこ

低水分で育てれば
味の濃いきのこができます

「ハナビラタケは白い茎のところがこりこりしていて美味しんですよ」

 そう語る木内克也さんは白衣をぴっちり着込んで研究に精を出す学者のような雰囲気を持つ。ハナビラタケの研究は15年に及ぶ。集中力を維持して長く地道にきのこの研究を続けてきた人だ。ハナビラタケはヨーロッパでは標高1000メートル以上の高地に育つと言われていた希少な幻のきのこ。近年、免疫力を高めたり、ガンを抑制するなどの効果があるβ-グルカンが他のきのこよりも豊富に含まれているのがわかり、培地での生産の研究が盛んになってきた。

「まいたけやしいたけなどの他のきのこに比べて菌糸が弱いんです。カビや雑菌にやられやすいデリケートなきのこです」

 ハナビラタケは都内のスーパーではあまり見かけない。たまに見かけても入荷数が他のきのこに比べて極端に少ない。生産に手間がかかるので単価が極端に高い。故に売れない。いや、価格や入荷数よりも単に品質の問題かもしれない。都内のスーパーの店頭に並んでいるものと木内さんの店で見たものは正直同じハナビラタケには見えない。同様に白くてもどこかぶよぶよしている感じの都内のものに比べ、木内さんのは茎が本当に太くてしっかりして傘の部分の張りもしっかりしている。

だから、木内さんの沼田きのこ園では店頭に並ぶと完売。単価は他のきのこに比べて少し高い程度なので、健康効果への意識はあるものの、一度食べてその美味しさに惹かれた客がリピートするということなのだと思う。

「きのこ栽培において効率化できない、品質に関わる部分には一切妥協しません。じっくりと時間をかけて高品質なきのこを栽培できていると思います」

語り口は穏やかだけれど、強い意思を感じる。店頭でハナビラタケと並んで人気なのがまいたけ。沼田きのこ園の栽培室に並ぶまいたけも茎が太くてしっかりしていて傘も大きい。1パック100円で売られている都内のまいたけとは見た目が全く違う。これは似て非なるものだ。

「独自開発の培地を使用し、香りや歯応えがよく、抗酸化作用の高いきのこを栽培しています。低水分で育成していることも特徴です。イメージとしては、このあたりの山の深い朝霧でしょうか」

 45日程度で育て上げてしまう促成栽培の生産者も多いらしいが、沼田きのこ園ではまいたけを90日かけてじっくり育てる。

「早く大きくするには水を少し多めに吸わせるんです。水を多めに吸ったまいたけはふわふわしていて香りも歯応えも弱いです」

 木内さんに言わせれば、45日でもまいたけらしきものはできるということ。木内さんのまいたけを持ち帰り、都内で1パック100円前後のまいたけ(らしきもの)を買い、それぞれ耐熱容器に入れて塩胡椒してオリーブオイルを回しかけ、200度のオーブンで15分ほど加熱してみた。違いは歴然。見た目も味も食感も。100円のまいたけをオーブンで焼くと水浸しになるのは経験済みで、いつも通りに仕上がったが、木内さんのまいたけはほとんど水が出ていない。ああ、こういうことか。100円のほうはたくさん吸った水が加熱されて組織が壊れ、一気に出たということ。食感と味わいの違いに驚いた。木内さんのはしゃっきりしていて噛み締めると旨みがじんわりにじんでくる。100円のほうはぐにゃぐにゃで味わいもほとんど感じない。感じるのは食物繊維だけと言ってもいい。木内さんのまいたけはそのまま白ワインのあてになる。これは、本当に美味しい。

「うちのハナビラタケやまいたけは炒めたり、スープに入れても食感が損なわれないので、きのこ本来の美味しさを感じることができます」

 そんな生産者が沼田にはいるのです。

取材/堺谷徹宏
撮影/高津修、沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香

沼田きのこ園
https://www.numatakinokoen.jp/
認証品:ハナビラタケ、まいたけ、まぜごはんの素
住所:沼田市上発知町1804-1
電話番号:0278-23-9663
取材を受けていただいた方:木内 克也さん


Farmer's Voice

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群馬県沼田市の認証ブランド「NUMATA BRAND」支える生産者さん。インタビューから見えた"生産者の声"を紹介しています。

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