りんご園にカフェを併設 阿部純子さん(あっちゃんりんご園)

フルーツ

利根沼田のりんごには
ファンが確実にいるので
もっと多くの人に知ってもらいたい

阿部「純子さん」と書いてお名前は「あつこさん」と読む。ファーストネームがそのまま観光りんご園の名前になった。そのあっちゃんりんご園に併設されているカフェの中でお話を伺った。

「父が早期退職して家族の反対を押し切ってりんご園を始めたんです。現在、父は81歳で母は74歳ですが、まだ現役でりんご園で働いています。その様子が本当に楽しそうで」

 阿部さんはそう言って顔をほころばせた。阿部さん自身はもともと介護福祉士として働き、りんご園専業ではなかったが、15年前に農業への専念を決意し、就農。

ご両親が園を訪れるお客様とのやりとりを楽しんでいるのを見て、お客様一人一人としっかりコミュニケーションを取ることを意識した。温暖化が急速に進んでいるため、栽培にいろいろな技術が必要になる。

「15年経ってこういうふうに仕立てると、こういうりんごになるのだと実感できるようになりました」

沼田市りんご組合や群馬県が主催する農業技術のセミナーには頻繁に出席し、新しい情報を積極的に入手し、情報収集、技術習得のためであればときには地方にまで出かけていくこともある。

「りんご女学校というのを6人で立ち上げたんです。通常のセミナーはどうしても勝手がわかっている男性中心になる。初心者の女性がいきなり参加してもちんぷんかんぷんです。だから、私は子育てが一段落した女性たちを集めてりんご栽培の講習をやろうと思った。女性もちゃんと畑に出て男性と一緒にりんごを作れるように」

 りんご女学校は出席、欠席が自由で宿題もなし。縛りを設けないことで参加しやすくしようと阿部さんは考えた。農業人口が減り続けている中での「無理のない農業」を心がけている。現在りんご女学校のメンバーは12人。ますます増えていきそうだ。

一方で、前職の介護福祉士としてのネットワークを生かし、霜害で小粒になってしまった大量のりんごを廃棄せずに加工の設備を持っている福祉作業所へ無償で提供する。

「もったいないですよ。小粒でも蜜がいっぱい入っている。売り物にはならないけれど、十分に美味しいりんごなので加工には最適です。大切に育てたりんごなので、使ってもらえて本当にありがたかった。先方もものすごく喜んでくれました」

 農福連携。これも「無理のない農業」の1シーンということなのだろう。阿部さんの話を聞いていると、ネガティブな現実を180度角度変えて見て考えることで違う現実が見えてくる。やれないこと、やってこなかったこと、考えなかったことを全部やってみる、考えてみる。女性ならではの頭の柔らかさだと思った。そして、女性ならではの実質をゲットするためのしたたかで強い意思。

「花が終わって実がなり始める頃が好きなんです」

 りんご園がよく見渡せる大きな窓の向こうを見ながら、阿部さんはふと呟いた。りんご園に併設したこのカフェはカウンターのみ。恐らく8人も入れば満席。いや、時節柄5人までか。いずれにしても完全予約制で、りんご狩りなどで園を訪れたお客様が一息つける場所として営業している。

自家栽培のフレッシュのりんごを仕込んだカントリーケーキが好評だとか。カフェではりんご園での接客とは違うテンションでの接客が必要になるはず。お客様の気持ちのテンションも変わるからだ。窓越しに子供たちがりんごの木々の間を行ったり来たりして遊んでいる様子を見る。様子はわかるけれど、作られた非日常との間に少しだけ距離ができる。それが本当の意味での非日常。お客様の満足度は深まる。奥行きを持ったリラックスできる時空間としての認識。楽しい記憶として深く心に刻まれるはず。そしてまたここに来たい、あるいは帰ってきたいと感じるのだろう。なんという仕掛け。本人はあくまでロマンチックでチャーミングに微笑んでいるだけだが。

「秋は日向や日陰にいろいろなものが見えてきて素敵です」

そんな生産者が沼田にはいるのです。

取材/堺谷徹宏
撮影/沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香

あっちゃんりんご園
https://m.facebook.com/acchanapple/
認証品:りんご
住所:沼田市中発知町295
電話番号:0278-23-9106
代表者:阿部 完一郎

Farmer's Voice

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群馬県沼田市の認証ブランド「NUMATA BRAND」支える生産者さん。インタビューから見えた"生産者の声"を紹介しています。

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