沼田野菜の魅力を発信し続ける 茂木方子さん(奥利根自然菜園)

野菜

すぎた枝豆を
そのまま畑で大豆に育て
美味しい味噌に。

茶豆、赤大豆、黒豆、大豆、大根、白菜、トマト、それにとうもろこし。茂木方子さんの農園での栽培作物は多品種にわたる。中でも30年前から栽培しているトマト、10年前からのとうもろこしは地元でも評判の美味しさ。

奥利根自然菜園のトウモロコシ

四季を通じての適地適作が基本。土づくりを基本に輪作体制をとり、農薬使用を極力減らす努力をしている。息子さんが東京の農業大学に進学したのをきっかけに夏休みなどに東京の大学生が泊まり込みで農業支援にやってきて農業を学んでいくという。大袈裟ではなく、この沼田の地で日本の農業を担う後継者たちが育成されているのだ。

「息子はもう卒業して帰ってきているんですけどね、後輩たちがずっと繋がっていて毎年手伝いにきてくれているんです」

茂木さん夫婦

茂木さん(写真左)はそう楽しそうに話す。柔和な笑顔、懐が深くいろいろなことを受け止めてくれそうな茂木さんを「沼田の母」と慕う学生たちが多いであろうことも想像に難くない。ここで楽しんで農業を学んだ若者が全国に散らばって日本の農業を支えてほしい。そんなことも考えてしまう。

奥利根自然菜園C

茂木さんが発信しているのは、実は農作物の栽培に止まらず、その延長線にまで目を向けている。沼田は全国屈指の枝豆の産地。夏の最盛期には、天候が良すぎて出荷できないくらいたくさんの枝豆ができてしまうことが多いと茂木さんは言う。

「枝豆は畑でそのまま育てれば大豆になります。大切に育ててきた野菜を少しでも無駄にしないようにできすぎた大豆を使ってうちでは味噌を作っています」

 国連がSDGsを提唱し、日本政府もそれに追従するように声を出し始めているが、民間ベースの宣伝による拡散ばかりで政策としての中身が伴うアナウンスにはまだ時間がかかる。環境問題に例を見ても、ヨーロッパの先進国で発せられるグローバルなコンセプトは極東の島国である日本の隅々には根づき難い。それは近隣諸国の動向に常に脅かされてきた地域の人々と300年間鎖国ができるような地理的環境にある日本との違いが大きいと思う。だから、食品の無駄をなくしましょうと誰かが叫んでも、なかなか浸透しないのだ。しかしながら、茂木さんはSDGsなどという話が海の向こうから伝わってくるずっと前から、できすぎた枝豆を使って味噌を作ってきた。誰も気づいていないときから、フードロスにすでに取り組んでいたことになる。丁寧な暮らしや無駄を出さない生活は、われわれ日本人が古来より受け継いできた美徳であったはず。恐らくそれは茂木さんにとっては普通のことだったに違いない。でも、今、その普通のことができない世界が目の前に現れている。

 茂木さんが仕込む味噌は、茶豆味噌、さくら味噌、給食味噌、黒豆味噌の4種類。加えてご飯や生野菜などにトッピングして使う「おかず味噌」が4種類。茂木さんは大声を上げてヒステリックに環境問題について語ったりはしない。そのかわりに真摯に土と取り組み植物と対話して、後継者を自然に育て、収穫物を最大限に生かすことで普通のことができない世界に向き合う。

 そんな生産者が沼田にはいるのです。

取材/堺谷徹宏
撮影/高津修、沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香

農業生産法人 奥利根自然菜園株式会社
https://www.okutonesizensaien.jp/
認証品:さくら味噌、茶豆味噌(合わせ味噌)、給食味噌、舞茸味噌、青山椒味噌、ボロネーゼ味噌、とうもろこし、トマト、トマトジュース
住所:沼田市下川田町5488-1
電話番号:0278-24-8785
代表者:茂木 方子
※トップの写真は、茂木方子さんの長女・麻里子さん、長男・貴寛さん

Farmer's Voice

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群馬県沼田市の認証ブランド「NUMATA BRAND」支える生産者さん。インタビューから見えた"生産者の声"を紹介しています。

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