昔からのつくり方、
機械を極力使わない
手作りを重視しています
谷川連峰、武尊山に抱かれた地は名水の宝庫。良いお酒は良い水から生まれると言われているが、上毛三山(赤城山、榛名山、妙義山)などを水源とし、清冽で豊かな水量がある群馬は知る人ぞ知る名酒の産地。群馬の水源の水質は軟水が多く、日本酒の仕込みに最適で口当たりの良い、柔らかい飲み口の酒ができると言われている。
群馬県のお酒では4社7種にのみ与えられた地理的表示「GI利根沼田」。生産者保護のために地元の風土や水を生かした酒造りはもちろん、原料米の種類や産地、酵母まで地元のものにこだわった非常に厳正な基準を満たしたお酒にだけ与えられる認証だが、永井本家、永井寛之さんのお酒 TONENISHIKI JUNMAI KOSHIHIKARI 90%もその一つ。
日本ソムリエ協会会長の田崎真也さんは2021年11月、GI認証酒の発表時にプレゼンターとして登壇し、このお酒の色と香りについてこんなテイスティングコメントを残している。
「色調はほのかにグリーンを含んだ透明感のあるクリスタル。香りは豊かな印象で白桃、ライチのコンポートのような果実香。菩提樹の花の香りにアーモンドクリーム、バタークリーム、生クリーム、米由来の蒸米、道明寺粉、白玉団子などの香り、石灰のようなミネラル香が調和」
この豊かな香りを持つお酒を作った永井さんはあくまで謙虚に語る。
「昔からの造り方をしています。機械は極力使わない。手造りを重視しています」
精米を経て、洗米、蒸米、麹造り、酒母造り、もろみ造り、搾り、濾過、火入れまでの複雑な工程は集中力と持続力を必要とする繊細な仕事。永井本家は1901(明治34)年に創業、永井寛之さんで4代目となるが、豊かな自然環境を持つ地域にしっかりと根を下ろしたお酒造りを続けてきている。
「GI認定酒に関しては、玉原水系の水で育てた地元・池田地区の米とその水で造ってい
ます。この地区の水は特に硬度が低くとても軟水であるため、口あたりが軽くまろやかに仕上がります」
前段の田崎真也さんは味に関してはこうコメントしている。
「味わいは、まろやかな印象の甘味からコクとふくよかさを与えるうま味とややしっかりとした酸味が広がり、余韻にも長く米由来のフレーバーがコクのある印象とともに持続する」
続けて田崎さんはこのお酒に合う料理として、オマール海老のローストブール ブラン、鶏のクリーム煮込み、チーズ・フォンデュなどを挙げている。伝統と地域へリスペクトし続ける姿勢で造られた群馬のお酒がいよいよ世界に認められるときが来た。
「うちのは全体的に味のあるタイプのお酒。お燗しても美味しいお酒を目指しています。小さい蔵ですが、手造りを基本に酒造りに取り組んでいます」
日本酒は伝統文化で、昔の造り方を伝承しつつ、後世に伝えていくことを大切にしているという。これからの永井本家から目が離せない。
そんな生産者が沼田にはいるのです。
取材/堺谷徹宏
撮影/高津修、沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香
株式会社永井本家
https://www.nagaihonke.co.jp/
認証品:GI認証日本酒「トネニシキ コシヒカリ90」
住所:沼田市下発知町703
電話番号:0278-23-9118
代表者:永井 寛之