生まれ育った沼田に何かを返したい
生産者さんを応援できる
沼田のお土産になるものを作りたい!
一昨年、沼田のりんご園の出荷量は高温障害、害虫被害などのために
前年比70%減だったという。
沼田の豊かな自然の恵みの象徴ともいうべき、りんごがピンチだと知って立ち上がった人がいる。
若林幸恵さん。
120号線沿いにある「くすりのわかばやし」で35年以上にわたって沼田の人々の健康を支える薬剤師だ。

漢方を専門分野としているので、客は単に薬を買いに来るというよりは若林さんへの健康相談を経て漢方を処方してもらうというパターンが多い。
生涯現役を標榜しながら、毎日忙しく仕事をしていくなかで
ふと気づくと生まれ育った沼田に自分が何も返していないことに思い至ったという。

「何かできないかと思った時に よく知っているりんご園さんにりんごの出荷量が激減しているという話を聞いたんです」
黄ばんで色褪せた表皮、カメムシの食害を示す大きな穴が開いているなどせっかく収穫期を迎えたりんごは 昨今の異常な暑さが原因でひどく傷ついている。
おそらく、幼い頃から真っ赤なりんごを見て、頬張って、咀嚼して味わって楽しんできた。
それが当たり前のことだった若林さんにとって胸が張り裂けそうなくらいのつらい話だっただろう。

傷ついて出荷できないりんごを買い取って何かに加工して、とそこまで考えたのはよかった。だが、ジュースやジャム、ドライフルーツでは すでに取り組んでいる人が沼田にはたくさんいるから、そこに自分が参入することで彼らの事業に差し障りが出てしまう。
そう考えた若林さんは沼田ではほぼ誰も着手していなかったりんごを使ったお茶の開発に乗り出した。

最初はりんご100%で作った。香りも味も何もない。これではいけないと試行錯誤を繰り返し、加工先を探し回り、加えてりんごの旨味を引き出すための素材を研究し続けた。
そしてついに群馬県沼田産の樹上完熟りんごを使用した「沼田のりんご茶」が完成。


樹上完熟とは樹になっている状態での完熟状態を指す。糖度が高く、味に深みが出て果汁たっぷり。これを丁寧に乾燥させ、ルイボスとはと麦を加えた。若林さん渾身の作品だ。
ティーバッグをカップに入れて熱湯を注ぐ。
3〜4分待ってティーバッグを引き上げ、ひと口飲む。
ふんわりとりんごの甘い香りが口から鼻へ抜けていき、後味に微かにりんごの酸味が残る。
贅沢なお茶が出来上がった。

しかし、若林さんの戦いは終わらない。いま取り組んでいるのは「りんごコーヒー」。
できるだけたくさんのりんごを救いたいとの思いからだろう。
沼田のお土産作りへの情熱は休むことなく、若林さんを突き動かしている。
そんな生産者が沼田にはいるんです。

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取材/堺谷徹宏
撮影/高津修、沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香
若林幸恵
認証品:りんご茶、りんごチャイ
ホームページ:りんご茶の販売ページ
代表者:若林幸恵