11月に冷えがくると
蜜が一気に入って
りんごが美味しくなります
平成4年にりんご園をスタート。続いて、ブルーベリー、さくらんぼ園を開き、毎年6月から12月までそれぞれの果物の収穫体験ができる香里園。
豊かな自然に恵まれた沼田市の北、玉原・迦葉山の麓は、寒暖の差が大きく、実のしまった美味しい果実が実る場所。
時季になれば、ホームページ上で「りんご状況」「さくらんぼ状況」としてこまめに実りの状況を発信している。りんごに関しては、シーズンを通して20種類以上の品種が実る。
「いつ来ても最低2種類のりんごの食べ比べができるようにしています」
と斎藤さん。取材に伺った10月中旬には9種類の食べ比べができるように、皮を剥いてひと口大にカットされたそれぞれの品種がずらりと並んでいた。
紅鶴、紅玉、秋陽、秋映、新世界、シナノゴールド、陽光、王林、北斗。
甘いものから酸味が少しずつ強くなるものへと順番に並んだ品種を食べ比べできるのは楽しい。
品種によってこれほど違いがあるものかと感心したのと同時に、そのことをしっかりと伝えようとしている丁寧な発信の仕方に好感を持った。
パンフレットには、「ペットも一緒に」「お子様もどうぞ」「車椅子の方も歓迎」のアイコンが並ぶ。除草剤、化学肥料を使わず、樹上完熟にこだわる。安心安全への配慮にも細やかさが感じられる。
「小さなお子様から車椅子の方まで果物狩りを楽しんでいただけるよう、手の届く低い枝まで果実を実らせています」
この園にはふんわりと温かいものに包まれるようなイメージがある。そこにはジェンダーとかSDG’sとか今どきのどこか空疎な言葉はない。
そこにあるのは実質的な真心。
安心して食べてもらえる美味しいりんごを作り、広く門戸を開けて、そのことをきっちりと発信する優しさ。
青果についての情報をしっかりと発信する一方で、加工品の評価も高い。
中でもストレートりんごジュース、すりおろしりんごジュース、りんごたっぷりジャムは沼田ブランドの認証を受けている。主原料であるりんごはすべて手塩にかけて育てた香里園産だ。
フレッシュなりんごの果肉をそのまますりおろして入れたすりおろしりんごジュースは世代を問わずに喜ばれている人気商品。りんごの美味しさを大事にしているからこそのクオリティだ。
「谷川からぴゅーっと風が吹くんです。11月に冷えがくると蜜が入って一気にりんごは美味しくなります」
標高550メートルの高さにある香里園の圃場は朝晩の冷えに晒される。冷たさ、寒ささえも楽しんでいるような斎藤さん。
最後にぽつりと言った言葉が印象に残った。
「りんごが好き」
そんな生産者が沼田にはいるのです。
取材/堺谷徹宏
撮影/沼田市
デザイン/中川あや
構成/山崎友香
香里園
http://kaorien.cc/
認証品:りんご、ストレートりんごジュース、すりおろしりんごジュース、りんごたっぷりジャム
住所:沼田市上発知町1782-2
電話番号:0278-23-9367
代表者:齋藤 岩男